「〇〇部屋一門」って何?
相撲部屋の紹介の際に「〇〇一門」という注釈が入ることがあります。
この「一門」というのは、相撲部屋のグループのようなもので、2020年時点で日本相撲協会には5つの一門といわれる相撲部屋のグループがあります。
(出羽海一門、二所ノ関一門、高砂一門、時津風一門、伊勢ヶ濱一門)
それぞれの一門は、親方と弟子のつながりで、所属するグループが決まることが多いようです。
例えば二所ノ関一門は15の部屋が所属しており、一方で伊勢ヶ濱一門は5部屋のみと、一門によって部屋の数もバラバラです。
なぜ一門ができたの?
現在のような給料制度ができる前は、力士の収入は各部屋ごとの巡業の興行収入や、タニマチからの収入によって賄われていました。
そして、巡業やタニマチに挨拶に行く際に、仲のいい親方の部屋同士で巡業に出かけるようになったことから、だんだんとグループのようになり、現在の一門になったのです。
しかし、現在では関取以上は日本相撲協会から給料が支払われるようになり、収入が安定したため、一門で集って巡業に行くことはなくなりましたが、当時からの名残が今も続いています。
そもそも一門って必要なの?
ルールや規約上にも厳密に「相撲部屋は一門に所属する必要がある」と記載されているわけではありません。
実際に錣山部屋は、時津風一門を脱退後に、どの一門にも属さない無所属の期間を経て、二所ノ関一門に移籍しました。
このように、あってもなくてもよさそうな風習である「一門制度」ですが、面倒ごとよりもメリットの方が多く、実質的には一門制度は必要な制度です。
一門のメリット①付け人や髪結い床の融通
力士が関取に出世すると、身の回りの世話をする付け人を幕下以下の力士からつけなければいけません。
しかし、部屋によっては5人以下の少人数しか所属していない部屋もあるなど、どの部屋も人手が足りているわけではありません。
そんな時に、一門のほかの部屋から付け人を呼び、関取の身の回りの世話を手伝ってもらうことができるのです。
特に横綱になると10人以上の付け人が必要になるので、一門の存在がなければ土俵入りすら危ぶまれます。
また、髪結い床という力士の髪型をセットする裏方さんも、一門のほかの部屋から呼ぶことがあります。
所属力士の多い部屋では、一人ではとても全員の髪を結えないので他の部屋の髪結い床の力を借りるのです。
一門のメリット②連合げいこやイベントがやりやすい
一門同氏は親方や力士同士のつながりが非常に強くなります。
そのため、一門で集まっての連合稽古などをスケジューリングしやすくなります。
特に関取が少ない部屋では、関取の稽古相手相手が不足してしまうため、ほかの部屋の関取の力を借りれるのは、お互いにとってメリットが大きいよう。
また、横綱や大関に出世した際の披露会や引退相撲、冠婚葬祭などでも一門で集まることが多いようで、力士の結婚式には多くの親方・関取が詰めかけて華やかな場になります。
また、本場所優勝時のパレードの旗手や、横綱の土俵入りの際の露払い・太刀持ちも一門の幕内力士が務めることになっています。
せっかくの晴れ舞台を、幕下以下の力士が務めるのは見栄えが悪く、格が落ちてしまいますからね。
一門のメリット③理事選挙の票集め
相撲協会では、2年に一度理事の選挙が行われます。
10名の理事の座を選挙によって決めるのですが、選挙の前に一門から立候補する親方を話し合っておき、立候補者をあらかじめ絞っておき、結局選挙は行われないというのが風習です。
(談合といえなくもないですが…)
しかし、貴乃花親方が相撲協会に所属していた時には、一門の意向を無視して立候補したために選挙が実施された、などの事例もありました。
独特の風習だけどメリットが多い!
角界独特の風習である一門制度で、派閥のようなネガティブなイメージを持つ人も多い制度ではあります。
しかし、もし一門制度がなかったら、相撲部屋の運営も難しくなり、廃業に追い込まれる部屋が続出したり、引退相撲なども行えなくなるなど、相撲ファンが悲しむ事態が起こりえます。
ファンが相撲を楽しむためには、やはり一門制度は必要な制度といえるでしょう。