まげは力士にとっては死活問題!
力士を力士たらしめるのは、恰幅の良い体格やまわしも重要ですが、独特のヘアスタイル、つまり”まげ(髷)”も重要なポイントです。
特に関取以上が結わえることのできる大銀杏は、幕下以下の力士にとっては羨望のヘアスタイルといえます。
そんな力士独特のヘアスタイルである、まげですが、実はまげが結えなくなることは力士にとっては死活問題です。
昭和の大横綱である栃木山は頭髪が薄くなったことで、まげが結えなくなり、全盛期に真っ最中に引退してしまいました。
また、昭和初期に一部の力士が相撲協会を脱退し”新興力士団”という団体を立ち上げました。
しかし、脱退する際に全員まげを切り落としてしまったことで魅力がなくなり、集客もうまくいかずに新興力士団の目論見は失敗に終わったのです。
このように、まげは力士のプライドでもあると同時に、観客から見ても力士の魅力の一つといえます。
なので、まげを結えなくなった力士は「そろそろ引退か…」ということを考えるようになるのです。
もしかしたら、いま活躍している力士の中にも、体は無事でもまげが結えなくなることで引退を決意する力士も出てくるかもしれませんね。
まげが結えなくて入門できなかったセネガル人力士
まげが結えなかったことで物議を醸した事件もあります。
昭和のころに、佐渡ヶ嶽部屋に若いセネガル人の力士志願者が訪れました。
アフリカ出身ということもあり、身体能力も高く有望力士になりえる逸材ではありましたが、一つ大きな問題がありました。
その理由が、縮れ毛によりまげが結えなかったことでした。
本人の意欲もあり無下に断ることもできないため、佐渡ヶ嶽部屋サイドとしても相撲協会に打診して何度も協議を重ねました。
しかし最終的には「まげを結えないのは力士としてふさわしくない」ということでお引き取り願うことになったのです。
もし実現していれば、黒人力士が土俵を席巻する世界があったのかもしれません。
まげの中身はカッパと同じ?
力士がまげを結わえるために、解いている姿をドキュメンタリーなどで稀に見ることがありますが、その際に頭頂部だけが禿げて、カッパのように見えることがあります。
「まげは結えているけど頭頂部が禿げているなら…引退も近いのか?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
力士はまげを結いやすく、カッコよく見せるために、あえて頭頂部を剃り上げているのです。
というのも、頭頂部までしっかり毛量があると、まげが崩れてしまう原因になってしまうためです。
これを中剃りというのですが、何も知らずにその姿を見るとぎょっとしてしまいますよね。
なお、引退が近い力士は、まげを結う必要がなくなる日が近づいていることもあって中剃りをしなくなるようです。